「おふくろの味」と「ふくろの味」―4

 『竹井塾』の第7回(食の適時性と「おふくろの味」)で「おふくろの味」と「ふくろの味」について取り上げました。その繰り返しになりますが、年数回に帰省で食べる「がめ煮」(筑前煮)は五臓六腑にしみわたり、「ああ、ふるさとに帰ってきたなあ」と心がほっとします。自分の原点がそこにあることを「食」を通して感じることができる「おふくろの味」だからです。
 民族や社会、地域によって異なる価値体系を「文化」と称し、「食文化」は文化の食に関する側面のことです。その担い手は恐らく料亭ではなく、家庭だったはずです。
 ところが、毎日教壇に立っていると、ふと不安になることがあります。それは、子どもたちが「おふくろの味」を知っているのかな?どうなんだろうと感じることがあるからです。「時短」などの言葉がもてはやされ、料理も時間をかけずにおいしく作ることが求められている時代。その結果、子どもたちの食事も「チン」だけの冷凍食品やレトルト食品ばかりが食卓に並ぶことも仕方のないことかもしれません。ただそこに地域性はほとんど感じられず、これでは「おくふろの味」ではなく「ふくろの味」です。とても寂しく思います。
 道徳科で教える価値の中に「伝統」「文化」がありますが、「家で食べる味」はその格好の素材に思えます。そのためには何かひとつでも良いので、子どもたちに「家の味」を伝えていくことが、「伝統」や「文化」に繋がっているような気がします。また子どもたちは「家の味」の良さを、ダイレクトに感じ取ってほしいです。

 

「家で食べる食」について、食文化などを含めて教えることができたらいいな~と思いながら、個々人の家庭の問題でもあるので、いつも悩んでいます。皆さんが実践していることがあれば、ぜひ教えてください。何か良いアイデアはないでしょうか。

竹井 秀文
竹井 秀文名古屋市立公立小学校 教諭/竹井塾塾長

大学卒業後、証券会社に入社。その後、福岡県筑紫野市立筑紫東小学校、岐阜大学教育学部附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校ほかで教職に従事。
現在は名古屋市の公立小学校で、道徳教育に磨きをかけながら、食生活の重要性を伝えることに注力しています。
趣味は、旅行、バレーボール観戦、ドライブ。
竹井塾を入口に、日本中で頑張る先生・栄養士・家庭を含め、みんなで子どもたちと食の大切さを語り合える場をつくっていけたらと考えております。
そして将来の夢は、日本の素晴らしい道徳教育を世界にも広げていくことです。