教科になった道徳の授業づくり②-16

 ある中学校で、先生を相手に模擬授業を行っていた時、「それは先生の誘導ではないか」とご指摘を受けたことがあります。この指摘を受けて、「先生の誘導」とは何かを考えてみたとき、小学校の場合、発達段階的にすべての授業は、先生の誘導で進められているように感じていましたが、中学校の先生は、その誘導は「子どもたちへの思考の誘導」であり、その延長線上に「思想の誘導」となり得ないかというご指摘だったのです。
 前回の①教科になった道徳の授業づくり①-15で述べた、「隔たり」という感覚に近いのかもしれません。
 ご存知のように、小学校では本年度から道徳科の教科書ができました。それぞれの教材を通して授業づくりを進めるためには、教師が教えたいことから教材を分析していくと、どうしても子ども達と距離感がうまれます。
 子どもたちに考えさせたいこと、教師には教えたいこと、そのことでお互いにズレがないような授業づくりが大切ですし、良い授業とは、きっとそのバランスがとれた授業なのだと思います。道徳科の授業づくりは、子どもたちの生き方づくりを考える授業ですから、目の前の子どもたちをよく理解し、子どもたちと授業をつくりだす必要性があるでしょう。
 また教材は、内容項目に対応して作られていますが、ひとつの内容項目を学ばせたいときは、他の内容項目と重なり合っていることが多いので、その点をしっかり見極めることが大切です。
 例えば、「友情、信頼」という内容項目は、「思いやり、親切」や「公平、公正、社会正義」などと結びつきます。様々な道徳的価値を構築して、人間関係はうまくいくからです。
 よって教材を分析するときに、まず全部読むこと。次に、その教材に含まれる多くの内容項目を見つけ出すこと。そして、それぞれの内容項目の関係性を考えること。そうして、最も学ぶべき内容項目を授業のねらいとして位置づけ、深く分析することで、軸となる道徳的価値も見えてきます。

 

教材の理解が一面的で浅くなればなるほど、「隔たり」のある授業になっていくので、時間のある限り教材を熟読し、そこから見える道徳的価値を探し、ぜひ道徳授業をつくっていただきたいと思います。

竹井 秀文
竹井 秀文名古屋市立公立小学校 教諭/竹井塾塾長

大学卒業後、証券会社に入社。その後、福岡県筑紫野市立筑紫東小学校、岐阜大学教育学部附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校ほかで教職に従事。
現在は名古屋市の公立小学校で、道徳教育に磨きをかけながら、食生活の重要性を伝えることに注力しています。
趣味は、旅行、バレーボール観戦、ドライブ。
竹井塾を入口に、日本中で頑張る先生・栄養士・家庭を含め、みんなで子どもたちと食の大切さを語り合える場をつくっていけたらと考えております。
そして将来の夢は、日本の素晴らしい道徳教育を世界にも広げていくことです。