教科になった道徳の授業づくり①-15

 全国各地で道徳の授業を参観させてもらいます。様々に工夫されアイデアが満載であり、その中に苦労が垣間見えてきたりします。道徳科となった授業をどのようにつくればよいのか、全国の先生方と同じ悩みを共有しながらも、教科書づくりに携わったものとしては、子どもたちの考えやすい教材なのか、先生方が教えやすい教材になったのだろうか、と日々心配もしています。
 道徳科は、よりよい生き方を求めて学びを展開していく教科ですが、子どもの学びたいことと、教師が教えたいことについて、少し開きがあるように感じています。
 例えば、礼儀について学ばせたいと思っていても、子どもたちは、その礼儀を支える思いやりについて考えを巡らせてしまいます。なぜこのような隔たりが起きてしまうのかを考えてみると、おそらく教師は、道徳において学ばせたい内容項目に着目しがちになりますが、子どもたちは、その内容項目を知りません。つまり子どもたちは、自然と学習内容を大きくとらえ、教師はどうしても学習内容を小さくとらえてしまうからではないでしょうか。
 そこで隔たりを生じさせない授業づくりが大切になりますが、どうしても教師には、教えたい “ねらい” があります。ねらいのない授業は、とても残念な授業になってしまうので、その結果、教材を教えることに注力する授業が多くなっているようです。授業づくりで大切なことは「教材を教える」のではなく、「教材で教えること」だと思うのです。
 以前から音楽科教育の研究もしていますので、音楽の授業でも同じことが見受けられます。教材曲を教えることに注力し、その曲にある音楽の諸要素についての学びがない授業です。教師が、子ども達にうまく歌わせよう、みんなで上手な演奏をしようと考えすぎ、その曲を教え込んでしまうのです。本質に迫る学びは、音楽の諸要素を学ぶ楽しさや面白さであり、音楽を愛好する心情を育むことではないでしょうか。

 

子ども達と隔たりを生じない授業づくりは、いくつかの手順をふまなければいけません。それは次回に紹介したいと思います。

竹井 秀文
竹井 秀文名古屋市立公立小学校 教諭/竹井塾塾長

大学卒業後、証券会社に入社。その後、福岡県筑紫野市立筑紫東小学校、岐阜大学教育学部附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校ほかで教職に従事。
現在は名古屋市の公立小学校で、道徳教育に磨きをかけながら、食生活の重要性を伝えることに注力しています。
趣味は、旅行、バレーボール観戦、ドライブ。
竹井塾を入口に、日本中で頑張る先生・栄養士・家庭を含め、みんなで子どもたちと食の大切さを語り合える場をつくっていけたらと考えております。
そして将来の夢は、日本の素晴らしい道徳教育を世界にも広げていくことです。