八女茶について-8

 前回、唱歌『茶摘み』と「故郷の味」-7で、故郷の「八女茶」のことを話題にしました。飲みなれた「八女茶」のことを、もっと知りたくなったので、福岡県茶生産組合連合会に連絡したところ、仁田原(にたばる)寿一さんが快く取材に応じてくれました。
 仁田原さんによれば「八女茶」の最大の特徴は甘味。「香りは、どこのお茶の産地でも同じかもしれませんが、『八女茶』はコクと旨味がとても強く、それが甘味につながっている」。美味しい「八女茶」が育つ理由として挙げられるのは、「有明海から吹く風(温暖な風)と九州山地の北のはしっこ(内陸性)の冷気がぶつかるところが八女という場所なんです。温暖かつ適度に雨も降ることに加え、矢部川と星野川が運んでくる堆積土だけではなく、赤土、黒ぼく土や安山岩などがブレンドされている土が、この地域で独特に配合されている」という地域特性だそうです。それに加えて生産農家の並々ならぬ努力が美味しい「八女茶」を育んでいることは間違いないと思います。
 ただ八女という場所は山岳地帯で、お茶の一大産地である静岡や鹿児島のような大規模な栽培ができず、収穫量がさほど多くないことから「生き残るために高級路線を選択するしかなかった」と。また振り返ってみると「お茶が安価に買える時代に、高級化路線は逆行していないか」と組合内でも議論になり、悩んだ日々が多かったそうです。
 現在は、フレンチ料理人ジュエル・ロブション氏や著名な日本料理人にも支持され、「八女茶」の評価は高まってきていて、大変うれしく、そしていままで「八女茶」を愛飲してくれている方、またこれから「八女茶」を飲んでみようと方々には「ぜひ『八女茶』の応援団として、毎日飲んで、味を楽しんでもらいたい」ということを熱く語られていました。
 また「八女茶」に限らず、日本のお茶はいまや外国から高い評価を受け、輸出は2016年までの10年間で約4倍に増加しています(全国茶生産団体連合会・緑茶の需給)し、国内では炭酸飲料、ミネラルウォーター類、コーヒーなどの消費が拡大しつつも、お茶を手軽に飲めるというペットボトルの台頭で、お茶を飲む習慣が広がったとは思います。
 ただ私としては、急須でお茶(リーフ茶)を入れ、ゆっくり味わって飲む文化が消えかけているのではないかと感じています。日々忙しい毎日だからこそ、いっぷくのお茶を味わう、「八女茶」のような自然の甘みを味わう、そういうひと時をもちたいな~、と思っています。
 日本の伝統・文化は、地場産業として地域の骨格をなしてきたのに、高齢化と後継者不足で、地域社会の先行きを不透明にしている気がします。仁田原さんは「お茶も同じです。高級茶をつくって、これからも海外に輸出していくのであれば、外国語を話せたり海外の情報収集などには若い力が必要なんです。また地元に若者達が残りたいと感じてもらうには、八女という町を文化的な町に発展させ、海外からのお客様をもてなせるような町作りなどを、みんなで一緒に取り組んでみたい」と。そこには地域と共に生きてきた私たちが「消費者として何を選択するか」とともに「日本人として、どう生きるのか再考すること」が問われているような気がしてなりません。

 

皆さんは、茶葉の産地ごとにお茶の味が違うことをご存知ですか?
お茶は、産地によって味が違いますが、飲み慣れたお茶が故郷の味であることを見直すことは、地域が育んできた食文化の再発見につながると思うのです。

竹井 秀文
竹井 秀文名古屋市立公立小学校 教諭/竹井塾塾長

大学卒業後、証券会社に入社。その後、福岡県筑紫野市立筑紫東小学校、岐阜大学教育学部附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校ほかで教職に従事。
現在は名古屋市の公立小学校で、道徳教育に磨きをかけながら、食生活の重要性を伝えることに注力しています。
趣味は、旅行、バレーボール観戦、ドライブ。
竹井塾を入口に、日本中で頑張る先生・栄養士・家庭を含め、みんなで子どもたちと食の大切さを語り合える場をつくっていけたらと考えております。
そして将来の夢は、日本の素晴らしい道徳教育を世界にも広げていくことです。