第25回 学校給食を考える

参加者

  • 竹井 秀文(名古屋市立公立小学校 教諭/竹井塾塾長)
  • 藤原 涼子(仮名・公立小学校 栄養教諭)
  • 岡澤 京子(仮名・公立小学校 栄養教諭)
  • 西秋 勇一(仮名・特別支援学校教諭)
  • 菅谷 朝香(仮名・特別支援学校教諭)
  • 内田 正幸(食品ジャーナリスト)

「お膳立て」をめぐって⑥

藤原-

道徳では人の気持ちや、あるいはまた自分と他人の関係を慮る、つまりは想像することを学びます。ところが食は、体験することが大切な部分が多いように思います。極端に言ってしまえば「やらないとわからない」です。親御さんも「食事を早く美味しくつくるための段取りする力は、やってみないとつかない」「つくることを体験していく過程で次につながることもある」と言っていました。
実際、私は教育課程ではない小学生2年生に、3年間にわたって調理実習を教えたことがあります。最初はもちろん心許ないわけですが、高学年になれば準備から後片付けまで問題なくこなします。その子どもたちに「調理員さんたちが、どこに視点を置いて給食をつくっているか解る」と問いかけると、「手間がかかっている」とか「だからこういう味になるのだ」など、体験があるから想像ができるし解るのです。その子どもたちの家庭にアンケートもしました。すると、「いままで食事づくりは手伝わなかったけど、手伝うようになりました」や、「自分で何かをつくって食べるようになりました」という答えが返ってくる。このことからわかるように、体験することで何かに気付くことができる食と、他人を慮る道徳がうまくコラボできれば、“心はより育つ”と確信できます。

岡澤-

私が勤務する地域では、子どもたちに献立を考えてもらう取組みをしています。アイデアを募集して集団給食に結びつけるわけですが、これも体験の入口になるでしょうね。家庭では親御さんとのコミュニケーションを図るきっかけにもなります。

藤原-

食べることは道徳心が育つことを考えると、食には人としての成長のために不可欠な要素がいっぱい含まれていることがわかります。

菅谷-

渡邉教授の「食は道徳を超える」ですね。

竹井-

「竹井塾」で、食と農に関するサマーキャンプを展開できないかと考えています。単なる体験学習にとどまらず、収穫、献立、調理、そして食べるまでを子どもたちが体験する。さらに、夜は「竹井塾」ならではの「学びの場」を設けます。もちろん、親御さんや食に興味を持つ先生たちの参加も大歓迎です。ただし、ここではあまり「お膳立てはしない」ことを旨とします。

岡澤-

自分たちが収穫したもので、子どもたちに献立を考えさせるのは面白い試みですね。

竹井-

そうすれば、子どもたちの給食への思いも変わるはずです。これまでの体験学習型では、家庭の食や学校給食とのつながりが持てなかったのではないかという疑問がありますから。

内田-

似たようなことは研究者も指摘しています。食育と地産地消についての調査した文献をよると、子どもたちの身近な体験などは食や農業への理解を深める大きな要因になっているとしながらも、単発的な体験だけでは十分な食育効果が得られないと結論づけています。これまでの体験学習といえば、たとえばお米では田植えと収穫だけです。それも否定しませんが、私の2年間の米作りの実体験からすると、米作りの本来はそれ以外の多くの作業に接しなければ分かりません。だから「竹井塾」のサマーキャンプは、単発体験の限界を超えるものにしたいですね。私は、「竹井塾」で学んだ子どもたちのなかから、「将来は農業をやりたい」という声があがることを期待してしまいますが…

西秋-

そこまで求めずに、体験をすることで何かに気付くだけでもいいのではないでしょうか。お米が簡単にはできない。それを体験を通して実感するだけでも大事だと思いますよ。