第30回 そうだったのか竹井塾(パート4)

参加者

  • 島田 美智子(仮名・小学校養護教諭)
  • 内田 正幸(食品ジャーナリスト)

いまどきの先生と親 - 栄養教諭も先生もさまざま

内田-

2017年9月に、神奈川県大磯町の中学校で給食の残食率が平均で26%、多い時で55%に上ることが報じられました。残す理由として異物混入や冷たい、味が薄くて美味しくないなどが挙げられていました。給食は予算の関係で自校方式ではなく業者委託でした。業者委託が全国で進んでいるようですが、島田さんが勤務する学校は?

島田-

自校方式ですが、栄養教諭が栄養士を兼ねて献立づくりからやっています。ただ、栄養教諭とはいえ仕事は栄養士のウェイトが多いようです。また食育については、学校全体で取り組むというより栄養教諭個人の力量に拠っているのが現実です。
その栄養教諭ですが、実は様々です。学校給食で気を付けなければならないのはアレルゲン対策ですが、現在、勤務している学校ではゆで卵がまるまる一個をメニューに入れる人もいました。いくつかの学校を経てきましたが、アレルゲンをそのまま出すことはなかったので、これには驚かされましたね。それだけではありません。以前の栄養教諭は、デザートに給食用のハーゲンダッツがあるのですが、「アレルギーのある子どもには出せない。でも可哀想だから」という訳のわからない理由で、子どもたちに人気のある氷菓を用意し食べさせていました。このズレた感覚が私は不思議で、他校から来た先生は一様に驚かれていましたね。こういうことは子どもの教育上からも好ましくありません。慣れると「なぜ○○○○を出さないの」となってしまうからです。

内田-

栄養教諭も一様ではないようですね。

島田-

栄養教諭だけではありません。学校の悪しき伝統とでもいうのでしょうか、先生が子どもたちにお手伝いさせるたびに、買ってきたお菓子で釣るようなことを平然とやってのけていますからね。出すにしても、せめて給食室で作ったものにしてほしいし、食をそういう形でしか利用できないのは極めて残念です。だからでしょうか。給食指導のノウハウがない先生が多い印象を受けます。高学年でもパンを手に持って歩きながらの子どもがいましたが、低学年の給食で「席について食べる」ことや「残さないように自分で量を把握する」こと、「バランスよく食べる」といった細やかな、しかし大切なことが指導されていない結果だと思えるのです。
これは今でも言えることです。現在の栄養教諭はそこに手を入れ始めていますが、一人では限界があります。担任は給食時間を“お昼の時間”程度の認識で、栄養教諭が「残食が多いから何とかしたい」と言っても、「多いですね、困りますね」と他人事のようだと言いますからね。

内田-

そんな先生ばかりなのですか。

島田-

食の大切さを子どもたちに伝えようと力を入れている先生もいます。他校での経験があるからなのですが、熱心に指導すると親が反発するというのです。

内田-

エッ、どう反発するのですか。

島田-

「無理矢理に給食を食べさせた」とか、「子どもが家で吐いています。無理に食べさせることはやめてほしい」などです。「給食を残さずにちゃんと食べよう」と指導するのは教育の一環で、それを実践する先生は沢山います。ところがクレームが出てくるのです。そういう親には一体、この学校をどんな学校だと考えているのかと、聞きたいぐらいです。

内田-

そういう話を聞かされると、暗然とさせられます。