第32回 そうだったのか竹井塾(パート6)

参加者

  • 島田 美智子(仮名・小学校養護教諭)
  • 内田 正幸(食品ジャーナリスト)

いまどきの子どもと親 - 子どもが変われば家庭も変わる

内田-

学校全体で食育に取り組む姿勢が弱いようですが…

島田-

食育をやらなければいけないと考えて担任と共同で、低学年を対象にして生活アンケートを基にした保健指導「朝食バスケット」を試みたことがあります。アンケート結果から、朝、体調が優れない子どもがきのこ類を摂っていないという特徴があったので、食品を栄養素の特徴によって赤色(血液や肉をつくるもの)、黄色(力や体温になるもの)、緑色(体の調子を整えるもの)に色分けして、ゲーム感覚で教えたことがあります。毎食、この各群から2種類以上の食品を食べるようにすれば、栄養素のバランスが取れた食事になるように考案されているために子どもにも解りやすいし、もともと学校給食などの栄養指導に利用されています。
家庭の事情があるので朝食はパンだけというように黄色しかないこともあるでしょう。実際、「ウチは黄色だけだった」と大声で言う子どももいましたから。ただ、「ウチには緑色がないよ」とか、「3つのバランスがあることで脳みそも動くし、おなかの調子も良くなり元気に運動ができるんだ」ということが解ってくると、「そうか、全部ないと元気にならないってお母さんに言っておくね」って素直に反応します。

内田-

子どもを通して家庭が変わるかもしれない。これは「竹井塾」の座談会に出席した栄養教諭の方々も強調されていました。

島田-

子ども通じて家庭に伝わればいいし、お母さんが子どもに色のことを言われて「これはまずい」と気付いてくれれば何よりです。私の他にも食に熱心な先生は、普段は家庭であまり作らないような和食の給食を用意して試食会を開いています。もちろん手の込んだものではありませんが、食事とそのバランスの大切さを家庭に伝えるためです。何といっても食の基本は家庭にあり、ですからね。

内田-

「竹井塾」は「食を疎かにすることは子どもを疎かにしていること」を旗印にしています。
家庭が食への関心を深めることはもちろんですが、子どもたちに食を身近に感じさせることも必要だと思います。

島田-

バケツ稲をやるだけでも子どもたちの関心は違ってくるし、食事に対して前向きになります。以前、勤めていた学校では農家の方に来ていただいて、稲を育てることから初めて脱穀まで経験しました。そうした実体験を積むと確実に食への姿勢が変わります。また、学校の催事で、栄養教諭と共同で展示発表「咀嚼について」をしました。その際、おしゃぶり昆布を出したところ、「あの体験で昆布が食べられるようになりました。初めて昆布が美味しいと思った」という高学年の子どももいました。それまで、家庭でも食べたことがなかったのでしょう。ただ、それを悲観するのではなく、何がきっかけになるのかわからないので、アレルゲンに気を付けつつも、子どもたちに様々な食体験をさせることが必要だと思います。

内田-

「身を以て知る」ですね。

島田-

稲作りだけではなく、大豆を栽培して豆腐や味噌をつくれば、つくることをはじめとして日本食との結びつきを知る機会にもなります。

内田-

子どもが変われば家庭も変わる、と信じましょう。

【総括】(竹井塾長)

竹井 秀文

学校教育において、食育は、二の次となっている現状がある。 それは、学力を優先させる現代教育の功罪である。 学力優先主義は、人として何を育てるのか明確ではない。 頭さえよければそれでよいのだろうか。
果たしてこれでよいのだろうか…。

食を学ぶことは、心を育てることである。食は、人を育てる。

それが、分かっている人は少ない。だから、学校現場での温度差をうむ。
平成30年度から小学校では、道徳が教科となるが、特別の教科にすべきは「食を学ぶ(食育)」である。

子どもんために、親はもっと真剣に食ば、教えていかないかばい。

竹井塾 塾長 竹井 秀文