第33回 学校給食再考①

ジャーナリスト 内田正幸

吐かせてまで食べさせるのか

2017年6月にスタートした『竹井塾』。並行して、学校給食がクローズアップされる報道が目立つようになってきた。

たとえば、異物混入などを原因とする「食べ残し」問題では、神奈川県大磯町と福岡県田川市などであった。

また「食べ残し」に関連して教員による行き過ぎた給食指導も報じられた。2017年9月に岐阜市の公立小学校で、50代の女性教諭が児童に給食を残さず食べるよう指導し、1、2年生の計5人が嘔吐していたことが分かり、市の教育委員会は「指導に不適切な部分があった」として教諭を厳重注意処分とした。

これに続いて2018年1月には、東京都教育委員会が、男子児童が嘔吐(おうと)するまで無理やり給食を食べさせたとして、区立小の女性教諭(40)を戒告処分にしたことも報じられた。「毎日新聞」(2018年1月31日)によれば、この女性教諭は2014年1月、欠席者が多く給食が余っていたため、児童全員にお代わりを指示。男子児童の一人が「もう食べられません」と訴えたが、「食べなさい」と無理やり食べさせ嘔吐させたという。

岐阜市の給食指導が報じられた直後から、ネット上で「給食ハラスメント」という言葉が見受けられるようになり、一般社団法人がフェイスブック上で給食ハラスメントに関する専門相談窓口を設置。さらに、「完食を強要するのは体罰や虐待に関わる」とまで指摘されるようになってきた。

『竹井塾』でもこれまで給食指導を取り上げてきた。竹井塾長は第10回「食の現実を伝えれば給食は残らない」のなかでこう指摘している。

一人で居残りをさせてまで食べさせる先生もいます。それを子どものためと思っているのでしょうが、学級内孤食ともいうべきことで人格否定になりかねません。子どもたちは、苦手なモノでも周りの友達が「ガンバレ!」などと励ますと、一口でも食べるようになるものです。それが人との繋がりであり、いじめを防ぐことにも結び付くのです。学級内孤食ではそれを助長するだけです。

岐阜市のケースが報じられた直後、教育評論家の尾木ママはこう綴っている。

いまだに根強い「完食」キャンペーンも大問題。「食育」の方向を間違えてる。ボクのブログで給食問題について書くと「休み時間まで残された」「嘔吐した食べ物を口に戻された」等、子供だけじゃなく親世代からもトラウマ投稿が続々。体質や体調によって食べられるものや量も違うのに、一律に完食を強要するなんて、教育ではなく人権侵害、虐待よ! 文科省も学習指導要領解説で、給食のねらいとして「楽しく食事をすること」を一番に挙げているのに……。

最近では食べきれない分を事前に減らすよう指導する学校も増えているけれど、ボクの周囲でも「作った人に感謝しろ」「残すのはただのわがまま」なんて仰る御仁も多い。栄養や食べ物の大切さを伝える指導は必要だけれど、給食も一斉主義から個に寄り添ったあり方に変化してきてる現状を、改めて認識したいわね。
(原文ママ 2017年10月5日・文春オンライン)

身体的な苦痛を与えるだけでなく、子どもに厳しく指導することまでも「体罰では」「虐待では」と捉えられるようになった風潮のなかで、子どもたちに完食を強要することも非難の対象になり始めているのだ。

ただ、給食の食べ残しはいくつかの問題を内在していることもあり、昔も今も教員の悩みの種であり続けている。
また、次回に紹介するように、厳しい給食指導が、良し悪しの二者択一で片付けられる問題ではない背景も横たわっているのである。