第34回 学校給食再考②
ジャーナリスト 内田正幸
学校給食の「食べ残しは」年間約7万トン
2016年の「消費者白書」によれば、日本国内の年間食品廃棄量は約1,700万トンといわれている。これは国内及び海外から調達された農林水産物のうち食用に向けられた約8,400万トンの2割に相当する。このうち、いわゆる「食品ロス」は年間約500万~800万トンと試算されており、これは、日本における米の年間収穫量(2011年産水稲の主食向け約813万トン)に匹敵する。
「食品ロス」は、本来はまだ食べられるのに捨てられる食品のことを指す。外食産業や食品加工業などの「事業系」と家庭より生じる「家庭系」に大別されるが、学校給食もこの問題には無縁ではいられない。
環境省は2015年4月、初の大規模調査となった「学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査」の結果を発表した。それによると、2013年度、小・中学生1人当たりで年間に約17.2kgの食品廃棄物が出たという。また、出席人数分の給食の提供量に対して残された給食の量の割合=「残食率」は、これを把握する全国約3割の市区町村での平均値は6.9%だった。
2017年度の国公立私立の小・中学生の総数は約977万人。これに、単純に一人当たりの食品廃棄物量約17.2kgを掛けると約16万8千トンにのぼる。図を参考に「食べ残し」を計算すると7万トン弱。この数字は鳥取県の米の収穫量(約6万6千トン 2017年)を凌ぎ、群馬県(約7万7千トン)に迫るのである。看過できる数字ではないだろう。
岐阜市の給食指導が報じられた直後から、ネット上で「給食ハラスメント」という言葉が見受けられるようになり、一般社団法人がフェイスブック上で給食ハラスメントに関する専門相談窓口を設置。さらに、「完食を強要するのは体罰や虐待に関わる」とまで指摘されるようになってきた。
図:児童(小学生)・生徒(中学生)1人当たりの年間の食品廃棄物発生量(平成25年度推計)
また、残食率(※)を約3割の市区町村で把握しており、その平均値は約6.9%。
「残食率」は、出席した人数分の学校給食の提供量に対する、食べられずに残された給食の量の割合
環境省の「学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査」では、食育・環境教育の取り組みも調査している。興味深いのは、「食べ残しの削減を目的とした食育・環境教育の取組を行っている」と回答した市区町村が他の回答を抑えてもっとも多く、約65%となっていることだ。リサイクルより食品廃棄物を出さないことが重要なテーマとはいえ、これが教員たちにプレッシャーとなり、食べさせる工夫を排除して「食べ残し」を出さないことだけを自己目的化する。それが前回紹介した厳しい給食指導の背景になっていないかについては、一考の余地があるのかもしれない。
子どもが給食を残すことの問題点は食品廃棄物や「食品ロス」の他に、成長に影響を及ぼしうることも見逃せない。お茶の水大学の赤松利恵氏ら研究チームは2013年、「学校給食の食べ残しと児童の体格との関連」という論文で、食べ残しの有無と児童の体格差に相関があることを示した。また同研究チームは別の論文で、「残滓群」の各種栄養素の摂取量が「完食群」より2〜3割少なかったことも示している。とするならば、食べ残しは今も昔も「ないに越したことはない」。では、どうすればよいか。(次回へ続く)