第46回 世界の食と日本【ドイツ①】

参加者

  • マンフレッド・マイヤー(外国語講師 日本在住24年)
  • 竹井 秀文(名古屋市立公立小学校教諭/竹井塾塾長)
  • 内田 正幸(食品ジャーナリスト)
  • 飯田 冬実(果物輸入商社勤務)

日本人がカルチャーショックを受けたドイツの食

内田-

ドイツには有機農業の交流会を取材するために訪れたことがあります。街に出て食事はしませんでしたが、ジャガイモとソーセージ、それにチーズの種類が豊富と記憶しています。今回お話を伺うためにドイツの食事情を調べましたが、ドイツ人は食事にあまりお金を使わないようです。実際、エンゲル係数を見ると日本は26%程度、ドイツは18%程度(2015年)という結果です。

マイヤー-

日本人は食への関心が高いですが、ドイツ人はそれほどではありません。その好例がテレビ番組です。日本ではどのチャンネルも食べ物番組ばかりです。しかしドイツでは、最近こそ増えてきましたが、日本に比べればまだまだ少ないですね。

内田-

日本人の食事パターンは朝と昼はある程度食べ、メインは夜という家庭がほとんどですが、ドイツは昼が充実しているようですね。「これから活動する昼はしっかり食べた方がいい」という合理的な考えのようです。

マイヤー-

昼はしっかりと食べます。私が子どもの頃はメインが肉か魚で、ジャガイモもしくは米やパスタ、そしてサラダ(野菜)、デザートというパターンが一般的でした。一方、朝はスライスしたパンまたはBrötchen(ブロートヒェン)という小さなパンにチーズ/ハム/スライスソーセージなどを乗せるか、またはジャムや蜂蜜をぬって、それにコーヒーか紅茶、もしくはココアが朝食でしたね。夜も似たようなものです。

飯田-

スペインなどヨーロッパでは昼食が一番!という国が多いようですね。

マイヤー-

国によって違いはありますね。イタリア南部に旅行したことがありますが、気候がかなり暑いので、大きな会社は違うかもしれませんが、街の中の小さな店や職人の工房は長い昼休みがありました。ドイツはそれほど暑い地域ではありませんが、私の父親の世代は昼は家に帰り、家族と一緒に食事することが普通でした。当時、学校も昼までで日本のような給食はなかったので、私も昼は家に帰って食事をしていました。

竹井-

今も昼がメインというパターンは同じですか。

マイヤー-

昔、地方では昼休みは2時間程度でしたが今は短くなっています。また、働いている母親も多くなってきているので、昼ごはんを作る人がいません。そうした影響でしょう、最近は夕食をメインにする家庭が増えてきていますし、給食を実施する学校も増えてきています。

内田-

ドイツでは、食事メニューに同じものが多く、単調なことが大きな特徴だと言われています。

マイヤー-

日本人の友人がドイツでホームステイしましたが、毎日夕食が、パンとソーセージというように同じ食事ばかりで、カルチャーショックを受けたようです。別の状況なら少しは良い食事を出すこともありますが、本当に普通の生活の体験のためのホームステイなら、ドイツでは何のもてなしもしません。だから彼は少し不満を持ったようです。

内田-

それは日本でも同じかもしれません。それはともかくとして、ドイツでは野菜をあまり摂らないという話も耳にしました。

マイヤー-

家で料理する人がいれば食べます。フランクフルトのような都会では一人暮らしが増えていますが、実際に野菜の消費が減っているかはわかりません。

竹井-

日本でも一人暮らしが増え、都会なら鍋や包丁がなくても“食べること”には困りません。

飯田-

知人のオランダ人の話だと、オランダには日本の牛丼チェーンのような店がなく、また外食は総じて値段が高いので、「食事は自分でつくるのが当たり前」と言っていました。

マイヤー-

ドイツでも、外食にはお金がかかります。

竹井-

日本の外食は安くて、ある程度の味ですから、調理技術がなくても生きていけます。ただ、子どもの頃から食事は自分で作ることを学んだ方がいいと思います。平常時だけではなく、危機管理として役立ちますからね。