第51回 世界の食と日本【東南アジア[ベトナム①]】

参加者

  • 高島 タイン(日本語学校「朝日国際学院」事務局長代理 ベトナム出身で日本に帰化)
  • 菊池 正敏(日本語学校「朝日国際学院」講師、現役時は海外赴任と柔道家として世界各国に在住経験あり、ラオス・日本武道センターの建設にも尽力)
  • 竹井 秀文(名古屋市立公立小学校教諭/竹井塾塾長)
  • 内田 正幸(食品ジャーナリスト)

地域によって味も調理も異なる食文化

竹井-

「竹井塾」では、日本の食を相対化するために世界の食の歴史や文化について連続して取り上げています。ベトナムの食文化を一言で表すことはできるのでしょうか。

高島-

日本の方は、ベトナム料理というとすぐに「生春巻き」を思い起こすでしょう。ただ、ベトナム北部出身の私は食べたことはありませんでした。初めて口にしたのは日本に来てからで、ベトナム南部出身の友人に教えられました。私が食べていた春巻きは揚げたものでしたからね。その南部では、日本のお好み焼きに似た「バインセオ」という料理がありますが、これもベトナム北部ではあまり食べることはありません。

竹井-

日本も北と南では特徴的な料理や味に違いがありますが、ベトナムではどうでしょうか。

高島-

ベトナムは北部、中部、南部に大きく分けることができますが、それぞれ味に特徴があります。北部は塩味が基本で、あっさりしていますから日本人に合うかもしれません。中部は辛く、南部は甘いことが特徴です。北部のアッサリ系の料理として有名なのが、北部・ハノイが本場の米粉を使った麺料理「フォー」です。鶏や牛から出汁を取ったスープはあっさりしていて食べやすく、鶏肉や牛肉、ハーブなどが具に乗っています。一日中食べますが、朝ごはんの代わりに食べる家庭が多いですね。
お粥を日常的に食べる文化は日本にはないかもしれませんが、べトナムではこれも主食です。肉を煮込んだスープを入れて、トロトロになるまで煮込み、パクチーやネギなどの香辛料などの好きな具を乗せて食べます。
ベトナムの食事のパターンは、朝は「フォー」やお粥で軽く、昼は家庭で調理したものや外食ですが、これもヘビーではありません。メインは日本と同じように夕食になりますね。

菊池-

「フォー」の食べ方はラオスと同じです。ベトナムは屋台も多いですね。ラオスも屋台がありますが、日本のぜんざいのような「ナムワーン」という食べ物がありました。タピオカやバナナ、小豆、寒天、黒豆などを甘く煮た具に、ココナッツミルクとシロップをかけて食べます。

高島-

屋台は夕方になると盛況になります。大都市で最近は増えてきたようで、若者が良く利用しています。食べ物だけではなく、ビールなどの飲み物や果物までほとんどが揃っています。スイーツとして、日本のぜんざいのようなものかもしれませんが、甘く煮た豆類や芋類、寒天や果物など複数の具材を合わせた「チェー」があります。また、屋台で特徴的なのは、家庭では滅多に見かけない食べ物があることです。

内田-

どのような食材でしょうか。

高島-

私の出身はハノイに近いバクニン省ですが、そこの屋台ではアヒルの丸焼きやトカゲ、カエルを細かく刻み、香辛料などと炒めた物です。

内田-

カエルは日本でもかつては食用ガエルがいました。アヒルやトカゲも日本人が想像するものとは違うのでしょうが、ベトナムでは昔から食材に用いられていたのですか。

高島-

その通りです。実際に食べてみましたがどれもおいしかったですよ。

竹井-

それもまた、ベトナムの食文化の一側面ですね。