第56回 世界の食と日本【ロシア②】

参加者

  • クズネツォフ・ソフィア(仮名・モスクワ大学卒業。日本在住)
  • 油屋 康(大手機械メーカー退職後にモスクワ大学留学。グローバルデベロップメント(株)代表取締役)
  • 竹井 秀文(名古屋市立公立小学校教諭/竹井塾塾長)
  • 内田 正幸(食品ジャーナリスト)

近隣諸国から伝わったロシア料理

内田-

ロシアは多民族国家なので、食文化も当然、多様でしょう。

油屋-

ロシアは多民族が住む地域であり、過去何世紀にかけて文化と共存してきた経緯から、近隣諸国から伝わってロシア料理となったものもあります。中央アジアのウズベキスタンではプラフと呼ばれるチャーハンがあり、これがモスクワではプロフとなりメニューに入っています。また、隣接するモンゴルの影響でペリメニという水餃子があります。さらに、ジョージア(注:旧グルジア・ソ連時代に独立)には、小龍包を大きくした水餃子のヒンカリがあり、モスクワでは人気の料理の一つですね。それ以外を含めて、私はジョージア料理(グルジア料理)がもっとも美味しいと感じています。グルジアはソビエト時代の第2代最高指導者のスターリンの出身地で、彼がこよなく愛したワインが有名で、ウオッカよりワインを好む土地柄でもあります。

ソフィア-

グルジアにはハチャプリという料理もあり、これも有名です。チーズナンのような料理で、中に豆や肉が入っています。

油屋-

ロシアの食文化でもっともポピュラーなのは黒パンでしょうね。日本のような甘いパンではなく、フランスパンほど固くはなく、酸味があってこれも私の好みでした。黒パンはライ麦で作られますが、この黒パンを発酵させて作る飲み物がクワスです。発酵させているので微炭酸となり、1年中買うことができます。夏に最も多く飲まれることから、ロシアの夏の風物詩になっていますね。日本の麦茶のようなポジションで、ホッピーのような味といえば分かりやすいかもしれません。

ソフィア-

クワスは飲むだけではなく、これを使って冷たいスープも作ります。飲み物では他に、カンポートがあります。果物のシロップ漬けと言ったらいいでしょうか。果物はベリーやリンゴなどでアルコールは入っていません。この漬け汁にお湯を入れて飲みます。もちろん中身も食べますよ。

内田-

ロシアの食文化を調べると、「ロシア料理は植物やキノコ類をメインにした精進料理と、乳製品や肉をメインにした非精進料理に分類され、精進料理が速いペースで発展していった」という解説がありました。

ソフィア-

グリブイというマッシュルーム揚げなど、ロシアではキノコ類を沢山食べます。豊かな森に恵まれ、暖かな季節には老若男女を問わずキノコ狩りに出かける習慣があり、私の祖母もキノコ狩りによく出かけていました。

竹井-

毒キノコの不安はないのですか。

ソフィア-

キノコの種類が分かれば問題はありません。私は子どもの頃から大人と一緒にキノコ狩りに出かけていたので分かります。

※毎年、毒キノコによる食中毒事故が起きています。野生のキノコの採取・喫食には十分ご注意ください。

竹井-

誰が採りに行ってもいいのですか。

ソフィア-

キノコが育っている森は“みんなの森”ですから、誰が採りに行っても大丈夫です。

内田-

日本でキノコ類は工業製品化しているので、子どもの頃からキノコ狩りというのはほとんど経験できないでしょう。ロシアのキノコ狩りのように、小さいころから自然に学ぶことは大切なことなのかもしれません。