第65回 世界の食と日本【ケニア③】

参加者

  • カサリン・カリウキ(土木工学を学ぶために東京大学に留学中)
  • 竹井 秀文(名古屋市立公立小学校教諭/竹井塾塾長)
  • 内田 正幸(食品ジャーナリスト)

一人で食事をする文化はよくありません!

竹井-

日本では朝食はもちろんのこと、夕食も子どもが一人で食事をする「孤食」が問題になっています。どう思われますか。

カリウキ-

忙しいという理由もあるのでしょうが、一人で食事をする文化はよくありません。私は日本に来る前に、一人で生活していた時期がありました。その時、心配した大家さんから、「一人で食事はいけない、一緒に食べよう」と、食事に誘われることが常でした。ケニアでは、家族でなくても食事は一緒に食べることが普通なのです。

竹井-

東京では、隣に住んでいるアパートの住人を知らないこともあります。

カリウキ-

ケニアでは、そんなことはあり得ません。

竹井-

カリウキさんは日本に来られてから5年です。日本の食事で戸惑ったことはありますか。

カリウキ-

生魚はケニアでは食べませんが、ナイロビには寿司店があり、そこで食べたことがあるので問題はありませんでした。今は大好きです。ただ、お米の種類が違うことには戸惑いましたね。日本のお米はモチモチしていて、ケニアのお米とは違うからです。

内田-

日本は短粒種、ケニアはインドと同じように長粒種でパサパサしていますね。ピラウ(ピラフ)などは長粒種の方がマッチしますね。

カリウキ-

もう一つは戸惑いというよりビックリしたことですが、それは馬肉を食べることです。ケニアで馬といえば富裕層が飼う高価な動物だからです。それを食べることが信じられませんでしたね。

内田-

で、食べたのですか?

カリウキ-

はい。何でも経験だと思いましたから、馬刺しも食べました。

竹井-

馬肉は日本のどの地域でも食べるわけではありませんが、調べてみると、英語圏のイギリス、豪州、アメリカでは馬肉を食べることは厳禁のようです。一方で、日本以外でも馬肉を食べる国はあるようです。

内田-

馬肉を食べることに驚かれたということでしたが、全体として日本の料理にどういう印象をお持ちですか。

カリウキ-

日本はシーフードが豊富だし、日本の料理は食べやすいですね。札幌で食べたジンギスカンはケニアのスタイルと同じ。鍋物やお好み焼きも好物です。また、日本の食べ物ではありませんが、キムチも好きですね。ただ、私は好奇心が強いからそう感じのかもしれませんが、一般的なケニア人には慣れるのが大変かもしれません。
また、ケニアでは野菜のケールの栽培が盛んでよく料理に使います。貧しい人たちはこれをよく食べます。日本でもケールはありますが、値段の高さに驚きましたね。

内田-

これもケニア大使館のHPに出ていたことですが、ケニアは新鮮な果物が豊富で、特にマンゴーやパパイア、かんきつ類の栽培が盛んなようです。

カリウキ-

ケニアの食文化の特徴の一つとして挙げられるのは、ケーキなどのお菓子文化がないことです。お菓子文化はイギリスによってケニアの西部地域にもたらされましたが、根付いていません。その一方で、果物の種類は本当に豊富で代表的なのはマンゴーです。日常的に食べています。値段は安く一つ20円ほどです。

内田-

20円ですか!日本では1万円以上するものもありますよ。

カリウキ-

日本に来て驚いたことの一つが、その値段の高さでした。私はお菓子よりフルーツが好きですが、よく考えてみるとケニアの食文化の一つがフルーツにあると言えるかもしれません。ですから、いたるところに果物の木があります。また、公共的なスペースに実っている果物は、誰が採って食べても構いません。

竹井-

羨ましい限りです、日本なら“泥棒”扱いされます。分かち合いの精神ということなのでしょうね。