唱歌『茶摘み』と「故郷の味」-7
唱歌『茶摘み』(♪夏も近づく八十八夜~)は、1912年(明治45年)に刊行された『尋常小学唱歌・第三学年用』に発表され、その後、2007年には「日本の歌百選」にも選ばれました。
私は、この曲を教えるにあたり、子どもたちに「故郷の味=慣れ親しんだ味」というものは大切なんだよ、ということも一緒に伝えたいと思っています。
思い出話になりますが、小さい頃に同居していた祖母は、よく緑茶をいれてくれました。とても美味しく、その味は今でも忘れられません。その祖母も他界し、先日、お茶の美味しさについて、母と話す機会がありました。
するとまず母は、お茶をいれてくれました。そのお茶の味は、昔から飲んでいる落ち着く味で、どうしてこんなに美味しいのだろうと改めて思いました。すると母は「うちのお茶は、昔からずっと八女茶なんだよ」と。幼少の頃から慣れ親しんだ八女茶の味が「故郷の味」として思い起こされました。
八女茶というのは、私の生まれ故郷の福岡県に広がる筑紫平野南部の筑後川と矢部川流域にかけて栽培されているお茶のブランド名です。荒茶の生産量は全国6位(平成29年)。伝統本玉露の生産量は日本一。また、高級茶の産地としても有名です(福岡県茶業振興推進協議会)。
八女茶以外にも、村上茶(新潟県)、狭山茶(埼玉県)、静岡茶(静岡県)、伊勢茶(三重県)、宇治茶(京都府)、大和茶(奈良県)、嬉野茶(佐賀県)などの多くの産地があります。これらのお茶は、地域の気候や土壌、栽培地の高度などで味や香りが異なるものの、日本の食生活の中には、必然といっても過言ではないほど溶け込んでいると思います。特に私の場合、「故郷の味」として心と体に染み込んでいます。
だから私にとって、音楽の時間に教える『茶摘み』に特別な思いがこみあげてくるのかもしれません。また子どもたちにも、地域が育んだお茶の味を「故郷の味=思い出」のひとつにして覚えてほしいな、と。
この曲を教えるたびに、八女が育んだ茶葉のことをもっと知っていれば、お茶への思いと祖母への感謝が、また違う味わいになっていたのではないかと、昨今そう考えると、知らずにいたことが残念になりません。
また近頃の家庭では、お茶を急須でいれるのではなく、ペットボトルで飲むことが多いと聞きました。急須でいれる美味しいお茶を飲んできた私にとって、“喉は潤せても…”というモヤモヤ感が残ってしまいます。
そこで地元の八女茶について学びたいと思い、産地の関係者の方に話を伺ってみました。
長くなるのでそれは次回に…
大学卒業後、証券会社に入社。その後、福岡県筑紫野市立筑紫東小学校、岐阜大学教育学部附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校ほかで教職に従事。
現在は名古屋市の公立小学校で、道徳教育に磨きをかけながら、食生活の重要性を伝えることに注力しています。
趣味は、旅行、バレーボール観戦、ドライブ。
竹井塾を入口に、日本中で頑張る先生・栄養士・家庭を含め、みんなで子どもたちと食の大切さを語り合える場をつくっていけたらと考えております。
そして将来の夢は、日本の素晴らしい道徳教育を世界にも広げていくことです。