食の問題を道徳から考える-10

 子どもたちを取り巻く食生活は、とても豊かです。しかし、全国の小中学生による給食の食べ残しは、一人当たり年間7キロにもなります。これはおよそご飯茶碗70杯分。このような問題は、食育などの教育活動でも考えることができるのですが、その原動力となる感謝の心を、道徳科において学ばせることが大切なのではないだろうか。
 子どもたちは、普段から給食を残さないで食べることを意識しています。その意識は、「もったいない」という感情によるものだと思います。そのような意識をベースに、「どうすれば食べ残しをなくすことができるのか」という問題を自分事として考えさせることが大切になります。そしてこの学びは、将来、我が国が抱える食品残渣量の問題を解決できる人として成長してくれるのではないかと期待もしています。
 教科書に掲載されている教材『おいしいきゅう食』では、自分たちの食を支えてくれる人たちの存在意義に対する理解を深め、尊敬と感謝の心を抱くことができます。給食という窓口から、自分のまわりにいる多くの人たちのおかげで食生活が支えられていることについて、様々な視点から深く考えさせる授業作りにしたいと考えています。
 授業の様子を簡単に追記します。導入では、給食は残さないで食べることの重要性を考え、食べ残しについての「問い」を一人ひとりにもたせました。展開では、教材『おいしいきゅう食』を読み、その解決方法を模索して、食べ残しをなくすための「解決策」を一人ひとりに考えさせました。終末では、当たり前のように食べている給食が、多くの生命や多くの人々によって、つくられていることを改めて「確認」させ、自分が支えられていることに気付かせます。そして、そのようにつくられる給食のありがたさを「実感」し、その思いが積み重なり感謝する心が醸成させることができたと思います。
 今回の授業を通して、食の問題に直接関連する教材や感謝という観点で、食の問題を解決しようとする道徳科の授業があっても面白いのではないかと思いました。

 

 

もともとよく食べる子どもたちでしたが、授業後は特に、もりもりと給食を食べていました。心が豊かなになれば、姿も変わるのかなと思いました。

竹井 秀文
竹井 秀文名古屋市立公立小学校 教諭/竹井塾塾長

大学卒業後、証券会社に入社。その後、福岡県筑紫野市立筑紫東小学校、岐阜大学教育学部附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校ほかで教職に従事。
現在は名古屋市の公立小学校で、道徳教育に磨きをかけながら、食生活の重要性を伝えることに注力しています。
趣味は、旅行、バレーボール観戦、ドライブ。
竹井塾を入口に、日本中で頑張る先生・栄養士・家庭を含め、みんなで子どもたちと食の大切さを語り合える場をつくっていけたらと考えております。
そして将来の夢は、日本の素晴らしい道徳教育を世界にも広げていくことです。