第31回 そうだったのか竹井塾(パート5)
参加者
- 島田 美智子(仮名・小学校養護教諭)
- 内田 正幸(食品ジャーナリスト)
いまどきの親 - 朝、寝ているお母さん
給食指導をすると親からクレームが入るという話でしたが、その親は家庭でしっかり食べさせているのでしょうか。
「そういう親に限って」ということではありませんが、朝食を欠食してくる子どもも毎日、2~3人はいます。「朝寝坊したからオレンジジュースを飲んで出てきた」とか、「食べたくなかったから食べずに出てきた」と言って保健室に直行です。朝ごはんをきちんと食べさせてウンチを済ませて、しっかりした状態で子どもを送り出すのが親の務めのはず。ところがそうではないケースがあるのです。これは他の学校でもありましたが、この学校でもネグレクトが疑われるケースもありました。子どもの食の貧困は親が招いているのです。
昔は、朝寝坊しようものなら親に叩き起こされたものです。
今はお母さんが寝ていますからね。子どもたちになぜ朝ごはんを食べてこないかを聞くと、「お母さんが寝ていた」という子どももいますから、呆れるばかりです。「お弁当の日」に市販の惣菜パンを持たせる親もいれば、遠足ではあるまいし、お菓子を付けてくる親までいます。かと思えば、偏食する子どもの親に深刻さがないことも感じます。「いろいろやっているんですけど、ダメなんですよ~」というノリ。他にも「肉は硬いからウチの子は食べられないんです~、スープのようすれば食べられるんですけど~」と困っていないのです。要はこどもの要望に応えているだけ。身なりはきちっとしているし一見、キャリアウーマン風のお母さんたちですが、接していると、食の大事なことが完全に抜け落ちて偏っていると感じざるを得ません。
学校では食や健康について基礎的な情報を家庭に伝えていますが、今どきの親は、効果があるものだけを知りたいという傾向も見受けられますね。私たちが伝えたい情報は、子どもたちにとっての基本的な生活態度であり、食を含めて生きていくための土台です。
にもかかわらず、「こういうサプリメントもあります」と伝えると即座に「その名前を教えて」「なんという飲み物ですか」ですからね。言いたいのはそこではなく、夕食は遅くとも7時まで、夜9時間前にはちゃんと寝かせなさいと伝えているはずなのに、そこが完全に抜け落ちているのです。知りたいという気持ちは解らないわけではありませんが、基本的な生活をすることが大前提であり、サプリメントや薬などはプラスアルファでしかありません。そこがまったく理解されていないようなのです。
そのうち、サプリメントだけの夕食という家庭が出現するかもしれません。
そうあってほしくはありませんが、食経験が足りないからなのか、味や食感に興味がない子どもが多いという印象を受けます。「給食は美味しかった」と聞くと「?」という反応で、食べなければならないから食べているという感じだし、「美味しいと思うものはないの」と聞くと「ウ~ン」となってしまう子どももいますからね。