第54回 世界の食と日本【総括 – ラオス・ベトナム】

竹井塾塾長 竹井 秀文

第50~53回の『竹井塾』は、「世界の食と日本-ラオス・ベトナム編」として、お話を伺いました。

第50回『竹井塾』では、ラオスの食文化の根源は、日本のご飯と梅干の関係性に似ているとのこと。そして梅を漬けると各家庭によって味が違うように、ラオスのチェオも各家庭でそれぞれの作り方があり、どの国にも“おふくろの味”があると知って、何か嬉しかったです。

第51回『竹井塾』で、もっとも驚いたのは、日本人ならベトナム料理といえば生春巻きをイメージしますが、ベトナム出身の高島タインさんは、ベトナムで生春巻きを食べたことがなく、日本で初めて食べたと聞いたときです。ベトナムは日本と同じように南北に長い国ですから、冷静に考えてみれば、北海道の食べ物を全部食べたことがあるかと問われれば、そのようなことはありませんから、いかに自分が偏った考えをしていたことに気が付きました。世界の食の話を聞くことで、食文化は多様であり、その地域に根差した文化でもあるということを改めて認識しました。

また座談会の中で「フォー」の話で盛り上がりましたが、以前ベトナム料理店でフォーを食べてから大好きな料理のひとつになりました。その味は、とてもやさしい味で、舌に馴染みのある米粉を使用しているためか、食べたときに安心できるおいしい麺という印象です。

第52回『竹井塾』では、ベトナムの食のこだわりが「新鮮」であること、人の集まるところには市場ができるのは「新鮮」への強い思いがあるからでしょう。

日本では、高知県土佐清水市で水揚げされる「清水サバ」は一匹ずつ釣りあげ、生け簀に入れて持ちかえり、港に着くと、漁師が駆け足で漁協の水槽に移します。それを地元では「サバダッシュ」と呼んでいるそうですが、痛みやすいサバを産地の人々は「新鮮」に対する熱い気持ちを「清水サバ」に表現しているのだろうと感じました。

そういう意味で、「新鮮」とは、食における重要な要素の一つであり、地域食材の新鮮さを大切に考えていけば、地産地消の本当の意味がわかるかもしれません。

第53回『竹井塾』では、クジラの話が出ましたが、ベトナムでは、クジラは漁師を守る神様と言われ、クジラを祀る信仰(参考:「クジラ信仰とは」ベトナムの声放送局)があるようです。

クジラといえば、今年の夏休みに山口県長門市での講演に招かれたので、長門市(長州)のことを少し調べてみたところ、17世紀中頃から長州捕鯨が始まったことがわかりました。長州では「鯨が一頭獲れれば七浦賑わう」といわれ、クジラは大きな繁栄をもたらす喩にもなっていたようです。また犠牲となった鯨たちへの感謝や哀れみの情を忘れないために「鯨墓」や「鯨位牌」、「鯨鯢過去帖(けいげいかこちょう)」という供養をしていたといいます。これは「命あるものをいただく」ことへの思いの表れに他にありません。

私たちが暮らしていく中で、そこには食への思いが多く詰まっているものだと、改めて感じました。またベトナムでは「アン・チョー・ブイ」といい、「食べる事を通して、人と人のつながりを楽しむ」という意味がこめられていることは、これから我々が目指す大きな目標にも繋がっていきそうです。

【博多弁の総括】

竹井 秀文

いろいろな文化にふれてからくさ、自分たちの「よさ」ばわからないかんばい。
おいしかもんには、必ずいのちがあるけん。

竹井塾 塾長 竹井 秀文