第95回 一般社団法人エルフ(education for life and food)設立

一般社団法人エルフ設立メンバー

  • 八木眞澄(代表理事)
  • 内野 祐(筆頭副会長)
  • 米田安利(副会長)
  • 渡邉達生(八洲学園大学教授)
  • 竹井秀文(竹井塾塾長)
  • 松尾博史(㈱洛慈社代表取締役)

福岡、岐阜、東京、現在は愛知県の公立小学校で教鞭をとり、その間一貫して「食は生き方の基本」を説いてきた竹井秀文教諭が、教育者、宗教家、外国人らと“そもそも食って何”をテーマに語り合い、その姿を模索してきた「竹井塾」。そこから得た結論は、生きる基本中の基本である食は、生命(いのち)やモノ・コトの循環、さらに他者との関係を見つめ直すことの他、食の歴史や文化をも学べるエッセンスが詰まっているということだった。これらに着目してさらに発展させ、「『食の学び場』づくり」を目指して設立されたのが一般社団法人エルフ。設立前後の経過をメンバーのやりとりを交えてたどる。

(食品ジャーナリスト 内田正幸)

設立登記までの長い前夜①

内田-

「竹井塾」は2017年6月にスタートしています。それから約2年。一般社団法人エルフが設立されましたが、エルフの名称が決まった経緯から教えてください。

松尾-

アイスランド在住の知人に、「まだ有志で集まって議論しているところだけど、食を学ぶことの大切さを伝える組織として、一般社団法人を目指しているので、ついては組織の名称を考えてほしい」と依頼しました。そこで提案があったのがeducation for life and foodの頭文字をとりelf=エルフで、子どもたちに人気の妖精エルフにもなぞらえていました。また当初は子どもたちに向けた活動を展開しようと考えていたので、エルフが良いのでは、と皆さんに勧めました。

内野-

名称を決めることと並行して第7案まで練り上げた一般社団法人の設立趣意書も当初の内容は、子ども対象を前面に打ち出す内容だったので違和感はありませんでした。それに日本の子ども達だけではなく、世界中の子どもたちを視野に入れていたので、英語もわかりやすい、というのも良かったと思います。

竹井-

ただ、メンバーの一部から、オウム真理教の後継団体のアレフと混同されないかとの懸念が出されました。

松尾-

その懸念はあるものの、「そうではありません!」と話のきっかけになると納得してもらいました。

内田-

設立趣意書は第7案まで練り上げたということですが、スンナリとはいかなかったのですね。

内野-

たたき台を作成したのは私ですが、メンバーの年齢もキャリアもまちまちですからね。皆さんの意見を聞いて、毎回次案に向けてそれなりにまとめたと自負していました。それが回を重ねるごとに、例えば「孤食、自給率なんてどうでもいい!」という意見など、様々な意見が飛び交って、少し苦労しましたね。

竹井-

私もほとんど最終案近くで、「食は仲間との繋がりという趣旨の内容を入れてほしい」と…

八木-

私も、「グローカルの前段に、日本の食の現状を入れて…」と指摘しました。

米田-

その結果、全員が納得したのが設立趣意書です。これは「竹井塾」の経験とメンバーの叡智の集大成ともいうべき内容です。また内野氏が、皆さんの意見を上手にまとめてくれたことも外せない事です。ここで改めてお礼を言いたいと思います。

内田-

スタートは有志の集まりでしたが、名称も決まり設立趣意書も整った。それで一般社団法人となるわけですが、法人化したことについては、いかがですか。

内野-

まず一般社団法人とは、人(社員)が集まって、はじめて法人格を取得することができます。また、事業は必ずしも「公益」を目的とする内容である必要はありません。基本的には事業の内容に制限はなく、どんな事業でも自由に行うことができます。これまで「竹井塾」は有志の集まりで、それを洛慈社のホームページを使って自由に情報発信をしていました。これからは一般社団法人として社会的信用を得ながら活動をしていくことは、重要だと思います。

松尾-

そうですね。いままでは私の会社のホームページの部門として「竹井塾」を展開していたので、責任の一部は私にもありました。ただこれからはエルフとして独立して、すべてのことに責任をもって進んでいくことは、大事なことではないでしょうか。

竹井-

はい。私自身もいままでは、塾長として責任をもって関わってきましたが、これからは一般社団法人の一員として、エルフが提案する活動への理解と賛同が得られるように、力を尽くしたいと思います。

八木-

私は紅一点という理由もあってか代表理事を要請され、それに栄養士としての知識や、いままでの活動実績を評価していただいたこともありますが、やはり決め手は「素人の我々と一緒に考えてくれませんか」という熱意に打たれたことかもしれません。その時、もう一度、頑張りたいと思ったものです。

内田-

設立登記までの事務作業は順調でしたか?

内野-

定款作成は、割とスムーズに進みました。それでも例えば、第2章 目的及び事業の項目では、少し細かく書きすぎて行政書士との打ち合わせで「事業は幅広くとらえられるように包括的な文言がふさわしい」とのアドバイスなどを受けたりしました。それでも何とか第2稿で定款作成が終わったことにホッとしました。以下6項目の事業を確定して登記しました。

  1. 「食の学び場」づくりの企画立案と実施事業
  2. 食の理解を助ける刊行物等の発行事業
  3. 食の理解を深める講演会等の事業
  4. 食が体験できるツーリズムに関する企画と実施事業
  5. 関係諸団体との協力関係を増進するための事業
  6. 前各号の事業のほか、当法人の目的を達成するために適当と認められる事業

八木-

そういえば、この第2章の目的でも文言を修正しましたね。当初は「当法人は、生きるうえでの基本である食を見つめ直すために、次世代を担う子どもたちの『食の学び場』づくりを目指し、あわせて、生きる糧を育んできた歴史と文化の再発見と地域の発展につなげることを目的として活動する」でした。日本の食はいま、危機的状況にあるとの思いが強く、食は子ども達だけの問題ではありません。親や大人を含む問題ですから「次世代を担う子ども達の」を削除しましたよね。

内田-

こういう立ち上げに加わったことはありますか?

米田-

今まで設立趣意書や定款作成に関わったことなどなく、それでも自分ができる範囲で意見を述べながら盛り立てていこう、という気持ちで参加しています。法人を立ち上げるということは、やはり熱意がないとできないと思いますので、このメンバーなら楽しみです。私もこれからエルフの一員として、さらに前向きに参加していきますよ。

内田-

登記は問題なく完了したのですね。

松尾-

登記書類の準備までは順調でした。ただ、その後に大きな壁が立ち塞がっていたのです。これは予想外の出来事でした。


次回へ続く