鯛も一人はうまからず・孤食について-9

 皆さんは、1人で食事をすることがありますか?
 内閣府「食育の現状と意識に関する調査」(平成23年3月)から6年が経ちましたが、平成30年5月29日に「平成29年度 食育白書」が公表され、「孤食」が平成23年度より約5ポイントも上昇していることがわかりました。
 この調査は20歳以上を対象に行われ、1日のすべての食事を1人で済ます「孤食」の日が、「週4~5日」が4.3%、「ほとんど毎日」は11.0%で、合計すると15.3%の人が「孤食」という結果でした。
 ただし単身・少人数世帯が増えたこともあり、「一緒に食べる人がいない」「一人で食べたくないが、他の人と時間や場所が合わない」などで、やむなく「孤食」になっている実情も、その背景にもあります。
 こうした「孤食」は、さらに進む可能性があり、地域や職場などで食事を共にする機会づくりも、今後の課題になってくるのかもしれません。
 その中で、学校給食は「孤食」にならない貴重な時間といえそうです。それに給食の時間というのは、学校教育の中でも最も重要な人間関係を築ける時間だと思っています。
 だから子供たちには、食事は、だれかと一緒に楽しく食べるからおいしいんだよ。美味しいものを食べると笑顔になるでしょ。その楽しい時間を感じることは大切なんだよ、と伝えていきたいので、給食の時間をとても大事にしています。
 給食に限らずですが、楽しい時を共有・共感することができる場を増やすことで、より豊かな人間関係を築くことに繋がるのではないでしょうか。
 ちょうど『食育白書』が公表され、「孤食」が増えているという記事が流れ始めた時に「鯛も一人はうまからず」という言葉が頭に浮かびました。もちろん皆さんはご存知かと思いますが、「どんなに美味しい物でも、一人で食べると美味しく感じられないことから、食事は大勢で楽しく食べたほうがよい」という教えですね。
 大人であれ子どもであれ、「孤食」は現代の食生活を見つめ直す契機であり、社会が向き合わなければならない現実として重く受け止めていかなくてはなりません。「鯛も一人はうまからず」を、心に思い出して社会を見つめてほしいです。

 

「孤食」について、皆さんと率直な意見交換をしたいですね。

竹井 秀文
竹井 秀文名古屋市立公立小学校 教諭/竹井塾塾長

大学卒業後、証券会社に入社。その後、福岡県筑紫野市立筑紫東小学校、岐阜大学教育学部附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校ほかで教職に従事。
現在は名古屋市の公立小学校で、道徳教育に磨きをかけながら、食生活の重要性を伝えることに注力しています。
趣味は、旅行、バレーボール観戦、ドライブ。
竹井塾を入口に、日本中で頑張る先生・栄養士・家庭を含め、みんなで子どもたちと食の大切さを語り合える場をつくっていけたらと考えております。
そして将来の夢は、日本の素晴らしい道徳教育を世界にも広げていくことです。