第29回 そうだったのか竹井塾(パート3)
参加者
- 斎藤 雄一(仮名:元・公立小学校校長)
- 竹井 秀文(名古屋市立公立小学校教諭/竹井塾塾長)
- 内田 正幸(食品ジャーナリスト)
特別支援学校の給食指導と「食の楽しみ」
皆さんの座談会を読んでもう一つ感銘を受けたのは、特別支援学校の給食指導についてです。子どもたちが将来、誰かと食事を共にする時に相手に嫌な思いだけはさせたくない。そのためにマナーをはじめとする食習慣を身につけさせることが大事だと話されていました。子どもたちの将来を考えているのだなと感じましたし、それが特別支援教育の一番大事なところですね。
※「竹井塾」第13回-食は子どもたちの未来をつくる-で西秋先生は以下の発言をしている。
この座談会を読んで、特別支援学校の教える側の気持ちを新たに認識しました。子どもたちの将来を考えながら、指導すべき時は厳しく指導するというものでした。それがその子のためになるということですよね。感動しましたね。
常識的なマナーを身につけさせることで大人になってから困らないようにするという話を聞きながら、私は教育の原点を聞いているような思いになりました。
子どもの将来を考えて指導するということが、つい忘れがちになっているような気がします。将来的に親も担任もいなくなるわけですから、それでも一人でやっていけるように指導していくことは極めて大事だと思います。
給食は学科ではありませんが、マナーを含めて教育にとって格好のテーマになるし、社会で生きていくための最低限のことを教えられるのではないでしょうか。特別支援学校に限った話ではありませんよね。
食育だけで相当なことが教えられる気がします。食育は食べることに焦点が当てられがちですが、食べるためにはつくらなければなりません。そのつくることが楽しみになっている80歳の知人がいます。その方は晩酌のツマミをつくるために買い物をし、料理をして食べることに生甲斐を感じていて、「それらが楽しくてしょうがない」と言うのです。その話を聞かされて、当たり前すぎて忘れがちになりますが、食べることは人間にとって精神的にも欠かせないことなのだと思いましたね。
私の父は3年間、手術の影響で食事を摂ることができませんでした。父にとってその3年間はどういう時間だったのか…。そのことと知人の話を重ね合わせると、食は栄養補給だけではなく、それにプラスして人間にとって欠かすことのできない楽しみなのだと思います。長生きすることも大切ですが、美味しいものを食べるという楽しみをもって生きることが重要ではないのでしょうか。生きる楽しみには、家族の結びつきや社会的な名声を残すことなどいろいろありますが、楽しみの原点は「今日の夕食は何を食べようかな」などと、ワクワクするような感覚をもつことのような気がするのです。
学校給食もそうであればいいのですが。
そういう子どもも多くいると思います。
私は福岡に帰省すると母親がつくる筑前煮を食べることが楽しみです。そうした生きる楽しさにつながる学校給食の一つが、地産地消をもとにした郷土料理のはずです。それが教育現場でどれほど意識されているのかが疑問です。“郷土料理だからメニューにしました”というのではなく、この地域で大切に育てられている食材でつくった料理、それが郷土料理であることを伝えて指導をすれば、食べることの楽しさだけではなく、郷土の良さをも教えることができます。これに限りませんが、食にはいろいろな側面があり、子どもと先生、あるいはまた家庭と学校などの垣根を越えて共に学ぶことができる格好の素材になります。
【総括】(竹井塾長)
食べることは、まさに生きることだということがわかります。つまり、食を豊かにすることは、生きることを豊かにすることなのです。
だから、食への意識を高めること、何気なく食べている一食一食に気を配り、楽しむことがとても大切だと思うのです。
みなさんの食卓には、どのような食材が並んでいますか。誰とおいしい食べ物を食べていますか。
自分の生き方へつながる楽しい食をして、心を、人生を豊かにしましょう!!
おいしかもんばいっぱいたべるけん、しあわせになるとよ!!
竹井塾 塾長 竹井 秀文